2014年03月06日

うちのつくり方19 ~おわりに~

おわりに
私は自分の家をリフォームした事があります。工事中、変更ばかりしていました。現場を見ると変更したくなるのです。自分でもそうだから他の人も当たり前だと思っています。

う-43


「まちの大工さん」では、外装内装もほとんど現場で決定しています。実物をみて決める、触って、歩いて決めるのが一番良いのです。ご自分の家になるのですからそれが一番なのです。もちろん自社で加工しているので、現場で気になるところは話をして、話がまとまれば、次の日に加工して現場に取り付けることができます。手仕事のいいところは、変更に応じられること。簡単に言うとオーダーメイド、注文に応じて変更することができる事なのです。「①住まいは特別なもの」に書いたように何十年、何世代も使用すると考えれば、満足しないモノをつくっても、次世代で解体してしまうかもしれません。


いいモノ(家)をつくらないと人は大事にしません。どうしたらいいモノ(家)になるか、そう考えないといけないと思っています。いいモノ(家)がどうかは建築主(施主)が決めるのです。そう考えると、鍵を渡し積極的に工事をみてもらい要望があれば変更に応じる事ができること、そしてリフォームに適したつくり方(工法の選択と現場作業の重視)は最低の条件だと思います。
「まちの大工さん」で昔ながらのつくり方でつくる理由は、他に良い方法がないと思っているからです。


     
う-44


  


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2014年03月03日

うちのつくり方18 ~まとめ~

まとめ
「はじめに」で他の多くの業者のつくり方に対する疑問を書きました。
①契約までに多大な費用を掛けています(宣伝、イベント、展示場、など集客費用が莫大です)
②設計、営業、工事、デザインなど分業することが当たり前になった。
③工事中に鍵を施主に渡さない。つまり、施主は自由に見られない。
④職人と施主との接点が少ない。
⑤工事期間が3カ月程。期間の短い事が良い事として宣伝されている。
⑥プレカット加工が増え、現場作業が減った
⑦材料は何でもよくなった。また、壁の中、床下、天井裏など一番大事な個所より出来上がりが問題。

以上の7項目でしたが、ここまで書いたように「まちの大工さん」では
①契約までよりも工事に費用を掛けています
②分業していません。最後まで同じ担当です
③工事用キーを渡し、積極的に見に来てもらっています
④見に来て職人の作業を見てもらっています
⑤工事期間は、現場に合わせています。どんなん工事も同じにはなりません。
⑥プレカットしていませんから、ほとんどの部材を工場で加工しています。ですから変更できるのです。
⑦見えない部材、特に完成すると見えなくなる構造材の耐久性を大事にしています。
と言った7項目になります。
う-42




次回は『おわりに』です。  


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2014年02月27日

うちのつくり方17 ~③-4 将来リフォームできるために~

その③ 将来、リフォームしやすいことを考えて

③-4 将来リフォームできるために~うちのつくり方~
まちの大工さんでは材料を一般の材木店や建材店から仕入れて、加工場で職人が材料を一本一本加工して現場に搬入して組み立てています。加工場で使う機械も職人が一人か二人で操作できる簡単な機械です。コンピューターで管理して材料を加工していません。天然の木材を構造材として加工しているため、木によって癖があり、それを見て一本一本加工するため、全て機械に頼らない方がいいのです。加工した材料を搬入し、構造材を組上げ、仕上げ材の外装・内装を張る。ほとんど現場で1つずつ部材を組んでいますから、将来、逆の事をすれば必ずリフォームできます。災害等で被害があっても、修理、補修ができるように現場作業を減らしていない造り方をしているのです。
う-39


私の代になって、私の父がつくった家のリフォームに行くとお施主さんにこんな風に言われます。
「お父さんがちゃんと造ってくれたから、悪くならない」
「もっと壊れるようにつくらないと仕事がなくなるぞ」
と皮肉も言われます。どのお客さんもつくっていた時に見ていたのです。ですから、大事に使ってくれるのです。

う-41


おじいさんやお父さんが苦労して建てたから建て替えではなく、リフォームしたいという話を聞いた事があります。リフォームした理由は、自分の家を建てた時の苦労話や家への思い(愛着)を家族に伝えたからです。家に愛着があったのは、人(職人)がつくっているところを毎日見て、「今日は壁ができた、明日クロスを貼るな・・・」とお施主さんも自分の家つくりに参加していたからではないでしょうか?職人も施主の希望に応え、一生懸命につくった、そこに物語できたからです。お施主さんと建てた職人が、自分の家づくりの物語の主人公なのです。
工事中に鍵を渡さない、基礎の段階で内装の色まで決めてしまっては、施主は物語に参加できません。建築業者が「図面通りにつくった」で話が終わってしまうからです。


次回は、『まとめ』です。  


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2014年02月24日

うちのつくり方16 ~③-3 将来リフォームできるのか?~

その③ 将来、リフォームしやすいことを考えて

③-3 将来リフォームできるのか?~最近の大きい会社のつくり方
ハウスメーカーでは、工場生産の比率を上げ現場作業を減らそうとしています。現場で基礎をつくり、その間に工場で内装外装をパネル化し、何台ものトラックで現場に搬入し組み立てています。もちろんパネルは重く、人の力では持てませんから全てレッカー作業です。レッカーでパネルを吊り上げ組み立てるのです。現場の作業が減り、短時間で家が建つので、仮住まいの家賃などが減るなどメリットがあると思いますが、レッカーで吊りあげたパネルは将来、現場で直せるのでしょうか?
う-37


完成した住まいに、駐車場や塀などが作られると、リフォームの時には、おそらくレッカーは使えません。レッカーを使うようなリフォームをするのか?と思われるかもしれませんが、経年劣化によるリフォーム以外では、交通事故で車が家に飛び込んできたなどは、ない話ではありません。そんな場合、パネルを取り外すことはできませんし、仮に外したとしても同じように修理できるのでしょうか。リフォームは、外壁の塗り直しや内装の壁紙を張り替えたりするだけではありません。地震や台風、事故などでも被害は出るかもしれません。その時に直せるのか、という事は大事なことだと思います。
う-38




次回は『③-4将来リフォームできるために~うちのつくり方~』です。
  


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2014年02月20日

うちのつくり方15 ~③-2 将来リフォームできる条件~

その③ 将来、リフォームしやすいことを考えて

③-2 将来リフォームできる条件
将来リフォームできる条件の一つめは、誰でも知っている工法(オープン工法)で建てることです。誰でも知っている工法ならば、つくった人が亡くなってもつくり方を知っている人が必ずいます。だから直せるわけです。ハウスメーカー独特なオリジナル工法(未公開なので、クローズド工法と言います)では、その工法のつくり方は一部の人しか知りません。当然数も少ないので、オリジナル工法は使っていた業者がいなくなれば、直せるか分らず、リフォームは難しいと思います。

う-34


条件二つめは、どこでも売っている材料(部材)でつくることです。一般に売っていない材料や注文して何日もかからないと手に入らない材料でつくられては簡単にリフォームできません。法隆寺も箱木家も身近にある木を使って建てられました。法隆寺の太い柱も1300年前には奈良の山で、箱木家の材料は近くの山では当たり前のように生えていた身近な木なのです。

う-35


条件三つめは、なるべく現場でつくることです。現場で造れば必ず現場で直せるからです。今では工場で、図面どおりに正確に早くつくることが良いこととされていますが、将来のリフォームに適しているかは別のことなのです。それとも、工場でつくったパネルは、将来現場で治す時には簡単にできるように考えて作っているのでしょうか?
工場ではなるべくコストをかけずに早くつくることしか考えていないのでは?と私は思います。

う-36




次回は、『③-3将来リフォームできるか?』です。
  


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2014年02月17日

うちのつくり方14 ~③-1 リフォームの時代~

その③ 将来、リフォームしやすいことを考えて

③-1 リフォームの時代
今では、リフォーム工事は当たり前になりました。ではなぜ、当たり前になったのでしょうか。その最大の理由は、日本中の大工がつくってきた工法(木造軸組工法)がリフォームに適した工法だからです。
日本の大工は柱と梁などの部材を組み合わせて骨組みをつくり、屋根を葺き、壁をつくり、内装をして家をつくります。骨組みに面材を付ける、主要構造材と仕上げ材が別々なため、リフォームに適しているのです。

う-32


奈良の法隆寺は、約1300年前に建てられましたが、今でも建っています。その理由はリフォームできたからです。日本の木造軸組工法は、全てをバラバラにしてまた元のように組み上げる解体修理ができるからです。寺だけでなく民家も木造軸組工法で、解体修理が可能です。神戸市北区に箱木家という家があります。約600年前、鎌倉時代末期か室町時代の初期に建てられた住宅ですが、増改築を繰り返し1980年代にダムが作られるまで実際に住んでいた家です。
う-33


約1300年前はもちろん600年前にも電気道具はありません。まして、工場で正確に部材を加工することなどできるわけありません。法隆寺や箱木家が建っているもうひとつの理由は、現場で部材の加工をして、組み立てたから、現代でも解体修理できるのです。今リフォームしている木造住宅のほとんども同じように職人が加工して組み立てたのです。一つ一つの部材は不揃いなのに、何百年も持っているのは現場作業が主で、調整しながらつくったからです。

次回は、『③-2将来リフォームできる条件』 です。
  


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2014年02月13日

うちのつくり方13 ~余談~

余談~木造住宅は、学校では教えてくれない~

私は大学の建築学科で学びましたが、大学の授業に木造の講義は、一講義、本一冊でした。何百年も前から大工が家をつくり、木造住宅は日本で最も建っている建築物と思いますが、明治時代に今の学問がつくられてから今まで木造住宅という専門課目はありません。もちろん、工業高校や専門学校にもありません。明治から変わっていないのです。阪神大震災からEディフェンスなどの施設で実験が増え、学問として進んでいる程度です。
プレカット工場がない頃の設計士の方は、加工している大工の所へ来て、どんなふうに造っているか、納まりをどうすればいいか見にきました。今はそんなことはしない方がほとんどです。私の所のように加工しているところも少なくなったので、勉強するところがありません。CADで平面図、立面図などを描き、肝心な構造図(軸組み図)をプレカット工場に依頼、耐震計算をしない方もあるようです。②-1の「設計図だけではつくれない」に書いたように設計図だけでできないのですから、現場を見て勉強することはたくさんあるのです。

う-31


日本の資格が実績よりも、試験の合否によって与えられ、実際の仕事を見て与えられていないことに問題があると私は思います。外国では、家を建てる時に呼ばれるのは、家をもっともよく知っている大工ですが、日本では有資格者の設計士です。②-3「私の体験談~1日で全部決める~」に書いたように事務所で全て決めてしまい、現場の意見も聞かないでいいモノができるのでしょうか?実際につくっている人(職人)の考えることは設計している人と違うのです。ですから現場に足を運んで職人の意見、考えを聞かないといいモノはできないと私は思います。
最近のデザインを前面に出した家を見ていると、現場に行った事があるのか、実物を見て考えたことがあるのか?と疑問を持つ事例が多く、特に大きな吹き抜けのある家をみると、『日本は世界でも有数の地震国である事を忘れているのでは?』思っています。


次回は『その③-1 リフォームの時代』です。
  


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2014年02月10日

うちのつくり方12 ~②-5 つくる過程を楽しむ~

その② 工事中、変更したくなるのが当たり前

②-5 つくる過程を楽しむ~うちのつくり方~
なにもない土地に基礎工事が始まり、上棟してサッシがついて外装工事、床、天井、壁と内装が仕上り、キッチンなどの設備を設置して、電気、水道が通る。工事がだんだん進み、家ができていく過程を見ていれば誰でも興味がわき、ワクワクすると思います。特にお子さんのいる方は、工事中に来ると大変興味を示します。他の人には見ることはできません。自分の家なので貸切です。こんな面白い事は見ないと損だと思います。

う-28


私は施主の方に「ドンドン見に来てください。聞きたい事があれば私か職人に聞いてください。」と言っています。ご自分のものですから当然だと思っています。確かに法律上は工事中の家は施工業者のものですが、だからと言って鍵も渡さず、自由に見せないのはおかしいと思います。そして、変更したいこと(もちろん耐震性が落ちるとか、法律に違反になる事はお断りしています)があれば、間に合えば変更に応じています。
一生に何度も家を建てる人はいませんから、見に来て変更したくなる事は当たり前、自然な感情だと思います。


う-29


この話は一例ですが、私の工務店では、コンセントの数と位置の確認を現場でお施主さんと一緒に確認しない限り、壁の工事をしません。壁の工事をしてしまうとコンセントの変更ができないからです。事前に図面で打合せをしますが、なかなか部屋のイメージができません。ですから、配線した時に現場でお施主さんと現場で確認するのです。床が張れていますので、TVの位置や家具の位置などの確認も同時にできます。

う-30


 
次回は、『余談』です。  


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2014年02月06日

うちのつくり方11 ~②-4 分業の弊害~

その② 工事中、変更したくなるのが当たり前

②-4 分業の弊害
大きな会社では、一つの家をつくるのに営業、設計、工事、デザイナー(コーディネーター)などのたくさんの担当者を置きます。私は本来、担当者を分ける分業は大量生産か特殊な専門知識がいるモノだと思います。全く同じ家はないので大量生産ではなく、特殊な専門能力もいらないのに担当者をたくさん置く理由は何でしょうか?

その理由は、専門家を置いているということで安心感を与え、担当を分けることでお客さんと話をする人を増やし、責任の所在を分散することでリスクを減らしているのではないでしょうか?責任の所在が一人になっているとその担当者が気に入らないと仕事はダメになってしまいます。それでは会社は仕事が取れなくなってしまいます。そして一番問題な事は、家の仕様を事務所で決め、現場を一番知っている職人は打合せにいない事です。

う-26



前回の私の経験にも書きましたが、工事の進行状況に合わせて外装内装の仕様など決める時間はあるのですから、担当者を一人に決め、お客さんと打合せした方がお客さんの事がよく分り、いい打合せ・良いモノができると思うのです。分業していいものがつくれるのは、車や家電製品など移動や持ち運びできるもの。建築では仮設住宅以外にそれほどメリットはないと私は思います。むしろ、分業すればお金の話は営業、図面の事は設計、工事は工事担当、デザインはコーディネーターと責任がどこにあるのか、分らなくなり施主側から見ると良いところがそれほどあると思えません。
う-27




次回は『②-5 つくる過程を楽しむ~うちのつくり方~』  


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2014年02月03日

うちのつくり方10 ~②-3 1日で全部決める~

その② 工事中、変更したくなるのが当たり前

②-3 私の体験談~1日で全部決める~
5年程前に新築工事をさせていただいた時の話です。
基礎工事が終わり、上棟前に屋根と外装の色(サッシを含む)の打合せを私の事務所で決めました。同じ日、お施主さんの同僚の方も新築工事中で、建築業者(ハウスメーカー)と打合せをしていました。そして、偶然にも同じ日に上棟したそうです。以下は、私が聞いた私のお施主さんと同僚の方の会話です。

同僚の方 「内装の壁の色はどんな色に決めた?」
私の施主 「屋根と外壁の色を決めただけで決めてない。」
同僚の方 「じゃあ内装はいつ決めるの?」
私の施主 「進行に合わせて順番に決めるらしい。」
同僚の方 「そんな事誰がしてくれるの?」
私の施主 「まちの大工さん、工務店の人。」
同僚の方 「何回も打ち合わせするということ?」
私の施主 「どうせ気が変わるから…今決めても無駄と言われた。」

う-25


同僚の方の打合せは、まだ基礎しかないできていない家の外装・内装、設備の色などの仕様全てをコーディネーターさんと4~5時間かけてその日1日で全部決定されたそうです。ユニットバスは2週間、壁紙は土日を省いて3日あれば届きます。オーダー製品でない限り、短期間で商品は入ります。
まだ上棟もしていない家の仕様を全てを決めなければならない。その理由は『会社の都合』しか考えられないのです。

次回は、『②-4分業の弊害』です。
  


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2014年01月30日

うちのつくり方9 ~②-2 『住まい』のつくりながら考える

その② 工事中、変更したくなるのが当たり前

②-2 『住まい』をつくりながら考える
大工が自分で材料を加工し、組立て、他の職種の職人にも工事を指示していた10年程前までは、細かいところは、現場で施主と一緒に考えて造っていたのです。大工は造りながら考えています。「ここは…」と思ったら、施主と相談して工事を進めていたのです。
う-23


工場で家をつくっても、一週間や10日では完成しません。しかし、工事期間中に考える時間があります。施主が工事の現場を見て気が変わる事は、私は当然だと思っています。「設計したらその通り」ではなく、工事を見てまた考えることができます。施主も職人と工事の進み具合をみて相談ながら、一緒につくるようになれば、造っている『住まい』にも更に愛着が生まれると思います。
う-24


 
次回は『②-3 私の体験談』です。
  


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2014年01月27日

うちのつくり方8 ~②-1 設計図だけではつくれない~

その② 工事中、変更したくなるのが当たり前

②-1設計図だけではつくれない
日本の住宅の設計図は、平面、立面、伏図、詳細図などがありますが、部分詳細図はほとんどありません。工事許可を申請する時に必要ないためか、描かれていないのが実状です。
部分詳細図とは、部材一つ一つの図面ですが、この図がないと細かいところはわかりません。構造やお金にはほとんど影響ありませんが、モノをつくるためには細部の納まりが分らないとつくれないのです。
では、設計図に部分詳細など全ての情報が描いていないのに、家ができてしまうのは、なぜでしょうか。 
う-21


細かいところは、職人が現場で判断して、つくっているのです。今まで、住まいをつくる大工が図面を引き、教わった技術で工事してきました。大工の棟梁は細かい部分の工事は施主と相談して決め、各職人に指示し、工事を進めていたのです。つまり、職人任せだったのです。そして、今でもそれは変わらないのです。

う-22


次回は、『②-2住まいをつくりながら考える』です。
  


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2014年01月23日

うちのつくり方7 ~①-4 現場を見に来て下さい~

その① 住まいは特別なモノ

①-4 現場を見に来て下さい~うちのつくり方~
まちの大工さんでは、今も私が子供の頃と同じように工事しています。最近は、共働きのご家庭も多く毎日来られる方は少ないですが、それでも、土曜などのお休みの日に職人が働いているところを見に来られます。うちには二人の大工がいますが、加工している時にすでに一度は会っています。上棟の時にも会い、現場に行けばいつもいますから、お休みの日に来ていただくだけでも、次第に話をするようになります。
よく相談される事ですが、毎日お茶を出していない事を気にされ、工事を見に来る事を遠慮される方います。「気になさらず、一週間に一度でいいですから、缶コーヒーでも持って現場を見に来て下さい。職人が働いているところを見て下さい」と言っています。実際の工事を見れば、今まで図面やパースなどでしか見られなかったモノを現実に見ることができるのです。聞きたい事が出るのは当たり前、その疑問に職人が答えてくれれば興味がわき、また来たくなります。
う-18-1


職人は、自分のつくった『住まい』に、お施主さんが興味を持ってくれる事を喜んでいます。一度も工事を見に来ないと、誰の『住まい』かわからない。そんな『住まい』に一所懸命に働く人などいないのです。
『住まい』は同じモノがないのですから、人が現場で工事しないといけない。もちろん、自分が造っているところを見られて困る職人はいないと思います。生産者が誰か、食品では最近良く公開されています。住まいをつくることと、野菜などの食品をつくること、つくる人がいい出来に喜ぶのはどちらも同じ、購入者にそのつくったものをいい出来だとほめてもらえる喜びも同じ、違いはありません。しかも、住まいは長期間使用する特別なモノなのです。まちの大工さんでは、契約してからの工事に重点を置いているのです。

う-18-2




次回は、『その②-1 設計図だけではつくれない』です。
  


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2014年01月20日

うちのつくり方6 ~①-3 経験談~

その① 住まいは特別なモノ

①-3 経験談
以前、私の現場のそばで住宅メーカーが家を建てていました。プレカット加工なので、現場工事はドンドン進み、工事は内装工事まで進んでいる様子でした。ある土曜日、朝から職人の姿がなく、代わりに朝から住宅メーカーの社員が出たり入ったりして掃除しているようでした。

う-15


その日の午後、施主の家族が見学に来ていました。内装工事まで進むと、床下、天井裏、壁の中など肝心なところは、見る事はできないので、自分の家の構造がどうなっているのか施主は見る事ができません。同時にどんな職人が自分の家を建ててくれたのか知らないままです。
このように見学はイベントの一つ、工事は自由に見せないのが当たり前なのです。

う-16


私が子供の頃、父に連れられて工事現場に掃除に行くと、施主の方が10時、3時とお茶を出してくれました。帰る時にも挨拶に見えて、気軽に職人と話をしていました。毎日会いますから、職人もこの人の家をつくるのだと知っていますし、必ず見に来ますからどんな仕事をしているか知っています。自然、職人は手を抜かず腕をふるって仕事します。いい仕事しようと思う訳です。

う-17




次回は、『①-4現場を見に来て下さい~うちのつくり方~』です。
  


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2014年01月16日

うちのつくり方5 ~①-2 契約は始まり~

その① 住まいは特別なモノ

①-2 契約は始まり~これからつくるモノ、完成していないのにお金を払う~
どんなに素晴らしい設計をしても、納得するような金額で見積もりがでても、見ていて楽しみな完成予想図を見ても、まだ何も『住まい』は、できていません。ですから契約してからが始まりなのです。


建売住宅(完成した家を買う)でない限り、『住まい』は契約して、契約金を払ってから作ります。施工会社によって異なりますが中間金、最終金と数回に分けて支払います。つまり、まだできていないモノに対してお金を払います。工事が始まり、思っていたことと違っても図面通りなら工事を止めることは難しく、そのまま工事が進み、お金を払っても満足した出来になるとは限りません。設計図と大きく違わない限り、途中で工事を止められないことは、施主側から見ると非常に不利です。
う-10


契約してからつくるモノなのに、多くの住宅建築業者では、工事中に鍵を渡しません。自分の家を自由に見られないのです。法律上、契約金等を支払っても、工事中の家は業者のモノですから法律違反ではないのですが、図面だけを見て完成する家を理解される方は、ほとんどいません。工事が進んでいかないとどんなモノができるか分らない方がほとんどなのです。工事中のモノに対してすでに一部のお金を払っていますから、当然工事中に見る権利はあると私は思っています。そう考えると、工事が始まってからが重要なのです。
う-12


次回は『①-3 経験談』です。
  


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2014年01月13日

うちのつくり方4 ~①-1 『住まい』が他のモノとの違うところ~

その① 『住まい』は特別なもの
①-1 『住まい』が他のモノとの違うところ
世代に渡って長時間使用する
住まいは、新築した人だけでなく、その子世代、孫世代と使用するかも知れません。当然そのままではなく、修理修繕、改築増築などのリフォームもするでしょう。直しながら、世代を渡って使用するモノ、他にこのような使い方をするモノはないと思います。


高価です
購入時に1000万単位のお金を払うモノは、普通の人には生涯で住まいだけではないでしょうか?長いローンも組んで購入するモノなど他にはないと思います。


家族が生活のために使う
朝起きて、食事をし働いて帰って、風呂に入って寝る、家族が団らんし、生活する場所が『住まい』です。24時間の内、何時間を住まいで過ごしますか?睡眠時間を入れれば、ほとんどの方は12時間以上ではないでしょうか?人生の半分を過ごすモノが『住まい』です。
う-8


移動できない、同じモノはない
キャンピングカーのように車に付けて移動するか家はありますが、普通の家は移動できません。建てる土地の形や気候に合わせて『住まい』をつくる事になります。仮に、ひとつの土地を区画して全く同じ面積に同じ家を建てても、全く同じ家族はありませんから同じ住まいになりません。つまり、『住まい』は家族とともに一つしかないのです。
う-9


人生の最初と最後も
生まれて育って、最後には死んでいく場所も『住まい』です。そうして世代を渡って使用するモノなのです。(後で出てくる神戸の箱木家のように600年間も使用された民家もあります)そのようなモノ=『住まい』をほかのモノと同じように、どこか知らない人が、いつの間にかつくって完成。これでいいのでしょうか?


次回は『①-2 契約は始まり』です。  


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2014年01月09日

うちのつくり方3 ~『うちのつくり方』本論~

『うちのつくり方』本論
私の工務店がなぜ「昔の家つくり方をしているか」その理由は大きく3つあります。

① 住まいは特別なモノ。
毎日家族が生活のために『住まい』を使い、使用期間も長く購入金額も高い。そして何より『住まい』は完成品で売っておらず、契約してからつくるモノ。まだできていないのにお金を払うモノはそうありません。契約金を払ってから完成するまでには数カ月あります。施主と職人が現場を見ながら、一緒に考えて『住まい』をつくる事ができると考えています。

② 工事中、変更したくなるのが当たり前。
設計図には全ての情報が描いてあるわけではありません。設計図だけではつくれないのです。工事中に気づいた事、変更できる事はたくさんあります。現場作業がある限り、考えながらつくる、つくりながら考える事ができますから、変更することもできるはず。その過程を施主の方にも楽しんでほしいと考えています。

③ 将来、リフォームし易いことを考えて。
木造在来工法は簡単な機械(職人が一人か二人で使える機械)と手道具で加工しているため、将来、現場でリフォームできます。多くの業者のようにほとんどを工場で加工してつくる工法ですと、将来現場でリフォームできないと思っているからです。
         


次回からの『その①住まいは特別なモノ』について4回に渡って掲載します。  


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2014年01月06日

うちのつくり方2 ~私の疑問~

今回は、今の多くの業者のつくり方(下の絵参照)に対する私の疑問を上げます。

① 契約までに多大な費用を掛けています(宣伝、イベント、展示場、など集客費用が莫大です)
② 設計、営業、工事、デザインなど分業することが当たり前になった。
③ 工事中に鍵を施主に渡さない。つまり、施主は自由に見られない。
④ 職人と施主との接点が少ない。
⑤ 工事期間が3カ月程。期間の短い事が良い事として宣伝されている。
⑥ プレカット加工が増え、現場作業が減った
⑦ 材料は何でもよくなった。また、壁の中、床下、天井裏など一番大事な個所より出来上がりが問題。
う-4


この中で、最も私が気になる事は③です。
ほとんどの玄関サッシには工事用キーがあります。工事用キーは工事中に使用するため仮に紛失しても取り替えなくてもいいのです。しかも、普通サッシ一つに3本付いています。このキーを持っていれば、施主の方は工事中の自分の家を自由に見ることができます。


誰でも「自分の家を造っている途中を見たい」と私は思っているからです。しかもすでに契約金は払っています。一円も払っていないわけではありません。「自由に見ていい」と言われて工事中の自分の家を見たくない人がいるのでしょうか?


次回は、私の工務店がなぜ「昔の家つくり方をしているか」について本論を書きます。
  


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2014年01月02日

うちのつくり方1 ~はじめに~

「うちのつくり方」とは私の工務店『まちの大工さん』の住まい(家)のつくり方という意味です。今回から、『まちの大工さん』のつくり方について、掲載します。ただし、他の住宅建築業者のように工法、技術についての話はありません。私の考えや大事にしている事は、最近の住宅建築業者と違う家つくりをしていることですが、その理由を書いていきます。


うちのつくり方

はじめに
まちの大工さんでは昔ながらの住まいづくりをしています。昔ながらと言ってもつい最近まで、どこでもしていた家の造り方で、大工が構造材一本一本から加工し現場で組み立てる『木造軸組工法(日本で1000年以上使われている工法)』のつくり方です。
う-1


最近の住宅建築業者は、プレカット加工(工場で材料を加工し、現場で組み立てる)やハウスメーカーのように工場でパネル加工して現場で組み立てる事がほとんどとなりました。今まで手で加工していた小さな工務店は、廃業やハウスメーカーの下請けになるなど自分で材料を加工しなくなりました。加工場は持たず、道具を車一台に積み、現場へ行く大工が増えてしまいました。私の工務店『まちの大工さん』のような自分で加工して『木造軸組工法』で建てる住宅建築業者は本当に減ったのです。
う-2


                      
「プレカットの方が安い、手間のかかる手加工をなぜしているか?遅れている。」などと言われますが、私は当面やり方を変える気はありません。それは「うちのつくり方」の方が良いと思っているからです。
それは、手で加工するといいことがたくさんあるからです。




次回は、最近の住宅建築業者に多いつくり方に対する『うちのつくり方』との比較と私の疑問です。  


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