2012年08月18日

「一枚のハガキ」を観て

「一枚のハガキ」を観に行きました。新藤兼人監督の遺作です。

大竹しのぶが50代と思えない演技をしています。また、柄本明が舅役で出ています。頭を下げて「ニヤッ」とするシーンは最高です。


100人の中から「くじ」で生き先を決める。映画の後、パンフレットを買ったらこの話は、新藤監督が本当に自身で経験した話だそうです。戦争末期に、32歳で出征した新藤監督の実体験の話と分り、信じられない気もしましたが、当時の軍部がデタラメな戦争をしていたのだと思いました。

映画の上官に与えられた任務は、戦場で役に立つ人を送るのではなく、ただの数合わせだったのでしょう。福島原発の作業員が下請け会社から何の仕事かもわからないで作業していることを思い出しました。

大竹しのぶが画面いっぱいに「わしをおいて何で死んだ。」と叫ぶシーン、豊川に「なんであんたは生きとる。」と叫ぶシーンは、亡くなった新藤監督の戦友94人の遺族の叫びでした。
お骨もない「英霊」と書かれた紙が一枚入っている箱を渡された遺族の気持ちを代弁したのでしょう。

農家の前のシーンが、何度も流れます。出征するシーン、「英霊」として箱になって帰ってくるシーン、義父が亡くなるシーン、農作業中に柄本が亡くなるシーンなど、しかし、この農家がラストで燃えてしまいます。大竹演じる嫁友子が、新しい生活に旅立つために。

ラストのシーンは麦畑の向こうに納屋が見えます。てっきり、お金で家を建てているのかと思いましたが、金色に実った麦畑の向こうで納屋に道具を下ろす二人でした。



  


Posted by まちの大工さん  at 19:10Comments(0)映画の話