2012年09月27日

「夢売るふたり」を観て~最後はカモメの鳴き声

「夢売るふたり」を観に行きました。
前作「ディアドクター」の西川監督なので期待して観に行きました。

映画は、火事で店を失った夫婦、阿倍サダヲと松たか子が店をやり直すために詐欺を働く、しかも、女房が女衒をする。男が女をだまして金をため、その金で店を出す話です。

二枚目でない阿倍が女を騙す、しかも、ウソをつかずに店が燃えたという本当のことを話し、同情を誘って金を巻き上げる。そのキッカケが、不倫の手切れ金で酔っぱらった女と不倫をしてその手切れ金を阿倍がもらう、その金の出所を松が知るという始まりです。

たくさんの女性が騙され、話が進むにつれ松と暮らす阿倍の時間は騙される女とのすごす時間の方が長くなります。松と阿倍の溝が深くなっていきます。そして、騙されたことに諦められない田中が探偵(鶴瓶)を雇い、阿倍追いつめます。そのあと、少し無理のあるラストです。

この映画のおもしろいことは、タイトルが「夢売るふたり」で「夢見るふたり」ではないことです。タイトルの通り、騙された女性たちは、みんな新しい夢に向かって行きます。ふたりの詐欺が、なんとなく閉塞感に包まれ、新しい道に踏み出せなかった自分の人生にキッカケを与え、新しい道に進むのです。

残念なことは二つ、阿倍と松の夫婦が燃えてしまった店を出すために苦労したシーンが全くないため、ここまでして金をためるのかという理由の裏付けが薄いこと、もう一つは、ラストの子供が包丁で刺すことは、子供が小さすぎて物理的に無理ではないかということ、リアル感が掛けていると思いました。

個人的には、どんどん暗くなり、笑顔が亡くなる松と詐欺師を笑いながらする阿倍との対比、阿倍と最後の別れになる、映画の中では会えなくなるシーンでの松の表情、松たか子の演技がきわだった映画と思います。

たくさんの俳優が入れ替わり出ますが、うまくまとめてあると思います。

ラスト、エンドロールの最後に真っ暗な画面にカモメのさみしい鳴き声が流れます。エンドロールが始まると帰ってしまう方が多いですが、せっかくお金を払うので、最後までいてカモメの声をいいた方がいいと思います。


  


Posted by まちの大工さん  at 19:11Comments(0)映画の話